2026.04.06
プレスリリース
ヒト肺オルガノイドが“呼吸する”新時代へ
—動的な肺メカニクス再現技術が「Biomaterials」に掲載—
HiLung株式会社は、東京大学 生産技術研究所 特任教授(兼 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授)竹内昌治先生、同研究所 特任助教 池尾聡先生(研究当時)、東京大学大学院情報理工学系研究科 谷佑太氏(研究当時)らとの共同研究により、“ヒト肺の末梢構造である肺細葉を模した肺細葉様オルガノイド(PAcinO: Pulmonary Aciniform Organoids)”を開発したことをお知らせします。
本研究では、HiLung株式会社 代表取締役 山本佑樹がco-corresponding authorを務めるとともに、当社スタッフも技術開発に参画し、ヒト肺の立体構造と動的な呼吸力学を再現する新たな実験系の構築に貢献しました。
さらに研究グループは、オルガノイド内部へ直接アクセスし、内腔側から圧力を負荷できるデバイス「DENIRO (Dynamic Exposure and Infusion Response Observer)」を開発しました。これにより、PAcinOとDENIROを組み合わせた実験系「PAcinOs in DENIRO」を構築し、光干渉断層法(OCT)による非侵襲的な三次元観察を通じて、圧力負荷に伴うオルガノイド体積の変化や肺コンプライアンスを定量評価することに成功しました。
また、線維化を誘導することが知られるブレオマイシンを用いることで、PAcinOにおいて肺線維症様の力学的硬化を再現し、既存の肺線維症治療薬の効果評価も実施しました。これにより、本技術が単なる形態再現にとどまらず、疾患モデルおよび創薬評価プラットフォームとして活用可能であることが示されました。
従来の二次元培養系では、肺の三次元構造や呼吸に伴う力学応答を十分に再現することは困難でした。また、一般的なヒト検体由来オルガノイドでは、内腔が形成されない、あるいは形成されても小さいため、内部へのアクセスや精密な操作に制約がありました。
本研究では、ヒトiPS細胞由来細胞エンジニアリングを基盤として、生体肺のブドウ房状構造を模倣した、より生体に近いサイズと構造を有するオルガノイドを構築し、その内腔へアクセス可能とすることで、三次元構造を保ったまま動的な力学応答を評価できる点に大きな新規性があります。
本成果は、ヒト生体では直接観察が極めて難しい肺の微細構造や生体力学の理解を前進させるだけでなく、肺線維症をはじめとする、肺の硬化やコンプライアンス低下を伴う疾患の病態解明、新規治療薬の評価・開発への応用が期待されます。
HiLungは今後も、ヒトiPS細胞由来呼吸器オルガノイド技術を基盤に、アカデミア・産業界との連携を通じて、呼吸器疾患研究と創薬の加速に貢献してまいります。
詳細は下記をご参照ください。
【記者発表】“呼吸する”肺オルガノイド!?――ヒト肺オルガノイドで動的な呼吸の力学を再現―― - 東京大学生産技術研究所
- 掲載論文について
- 雑誌名:英国科学雑誌「Biomaterials」2026年2月26日付オンライン版
論文タイトル:
「Dynamic in vitro platform for mechanical profiling of human pulmonary aciniform organoids via intraluminal access」
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0142961226001183?via%3Dihub